八窪章吾さん個展
今回は美術館ではなく、とある田舎町のコーヒー屋さんへ。
何年か前にもここへきたことがあるのですが、田舎町とは思えない空間へと誘ってくれるお店なんです。
一体どうやってこんな空間を作り上げたんだろう?って、すごく興味深いお店なのですが、そんな空間で、造形作家さんの個展が開かれると聞いたので久しぶりに行ってみることにしました。
Sonoda coffee
そのコーヒー屋さんは、ある山道の途中にある道の駅の敷地内にあります。
とても和やかな雰囲気の看板。
新鮮なお野菜や果物、花の苗、ハンドメイド作品なんかも売っています。
その売店の隣に小さく佇む、何やらおしゃれな建物。
こちらが今回訪れた「Sonoda coffee」さん。植物たちに囲まれた入り口。
あ、見つけました。乱雑に、そしてアーティスティックに置かれた椅子に小さく「八窪章吾 個展 DANCE」のカードが。
コーヒー屋さんが舞台の個展ってどんな感じだろう?少し緊張しながらドアを開けると、店主さんがすぐに案内に来てくださいました。
「空いてる席にお荷物置かれて、ゆっくりご覧ください」
前に来たときも思ったんですが、ここの店主さん、まだお若いと思うんですが、すごく雰囲気があって魅力的な方です。この空間を創り上げたお方。思い描いても、なかなか実現できることではないと思います。すごいです。
私は、お店入ってすぐのゆったり座れるとても雰囲気のある席に座らせてもらいました。お店は相変わらずすごい空間です。田舎のドライブ中に異空間へ彷徨ってしまった気分です。
暑い日だったので、アイスコーヒーを注文。美しいグラス。
グラスひとつとっても、一片も逃さず世界観が演出されています。コーヒーもとっても美味しい!
八窪章吾さんの作品
そんな空間に、白く浮かび上がる小さな造形作品を発見しました。
そう、これが今回の個展、八窪章吾さんの作品です。
店内をよく見ると、ポツンポツンと作品があちらこちらに待っていました。
どれも全部表情も違って、ライトに照らされて、角度を変えてみるとまた違う印象に変わったり。面白いですね。
照明との相性がとてもいい感じで、陰影がすごくいいです。それがまたとても繊細で儚げ。
作品を鑑賞していると、八窪さんご本人さんが、作品の説明や展示方法などを話にきてくださいました。
石粉粘土をベースに鉱石粉末、顔料、石や土などを混ぜて作っているのだそう。
作品は触っても大丈夫ということで、「ぜひ羊を並べ直して自分の物語を作ってみてください」とおっしゃっていました。
なので1人で美味しいコーヒーをいただきながら妄想タイムに突入してしまいました。
羊の表情が全員違って可愛いです。「貴婦人」というとても小さな小さな作品なんかは、自分のそばに置いておきたいですね。そばにいて欲しいです。
私が座ったテーブルに展示されていた「夜想曲」という作品。
たまたま座った席だけど、じっと見つめていたら、少しずつ見え方も変わってきて。
肌の色が、白っぽいんだけど、血色を感じられて不思議だなと思っていたら、なんと女性用のファンデーションで色付けされているとのこと。
なるほど、絵の具では出せないかもしれないですね、この血色感。唇のほんのりピンクが好きでした。
他の作品も、その時々のインスピレーションで湧き上がってきた思いが伝わるものばかりで、なんだかじんときました。
空間と作品の合作
地方の道の駅の片隅にこんなすごい創造空間が。
このお店だけでも、もう、一つの作品。作品と作品の合作という印象でした。
八窪さんも、今回の展示は、「このコーヒー屋さんのこの空間でしかできない展示をやろうと思って、この展示のためだけに作った作品がほとんどです」とおっしゃっていました。
あの空間で、あの照明で生まれる陰影。
また違う時間帯に来たら、違う雰囲気なんだろうな。たまたま行ったあの時間に出会えた作品たちの表情は、きっとあの時間の私だけのもの。
粘土に何も手を加えないと、そのまま粘土。
だけど、人が手を加えるとまるで生き物のように様々な表情を見せるようになる。
不思議だな。それを造形作品として楽しむ事ができる私たち。
普段から意識していなくてもいろいろな事を感じながら毎日を送っていて、その感じたことと、ある日観た造形とが重なる時、感動を覚えます。
感動って奇跡なんだなー。
日々創り出され、生まれてくる感動。やっぱりもっと出会いたいです。
コメント