ビアズリーの系譜 アール・ヌーヴォー、日本の近代画家たち
なんだか懐かしい。下関市立美術館といえばこの空飛ぶオブジェ。遠くから見ると宙に浮いているようで不思議です。さて、今回下関にやってきた目的はビアズリー展。あるあるですが、会期ギリギリになって焦って行くやつです。
オーブリー・ヴィンセント・ビアズリー
ビアズリーという挿絵画家を私はあまり知らなかったのですが、この展覧会のCMを観た時に一瞬で心を奪われたのです。
わずか25年の生涯。画家としての活動はたったの6年だったというので驚きです。
彼が残した絵はとても内容の濃いものだったので、たった6年というのが信じられません。
元々頭の良い、大人びた子供だったそうです。そのために、絵を描く時もきっと何を目指して描けば良いか、とか、どうかけば良いか、とかそういう事を掴むのが早かったのかな、と思いました。私の勝手な憶測です。
戯曲『サロメ』の挿絵
オスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』の挿絵。官能的で繊細で怪しくて、ゾクゾクしました。細かく繊細な装飾、細いラインの一本一本に魅力を感じました。こんなにも魅惑的な作品を弱冠22歳で仕上げたというのは本当に驚きです。ある程度長く生きて、色々な事を熟知して、感じ取る力がないと普通はこんなに奥深いもの描けないのではないかな。それとも、若いからこそ恐れずに思うままに表現できたのか。ただストーリーをそのまま描くのではなく、ビアズリー独特の感性で描き上げたこの挿絵は、観る人の想像力を掻き立てる素晴らしいものだと感じました。
戯曲『サロメ』を詳しく知らない自分が残念。ストーリーの説明は展示してありましたが、また時間を見つけて詳しく調べてみたいなと思っています。詳しくなくても、この挿絵だけでも観てよかったと思える作品ですが。
「イエロー・ブック」や「サヴォイ」なども、また違う表現をしていて、一体どこまで表現できるんだろう?と不思議に思うほど。
やっぱり色々なものを観て、どんどん自分流に吸収できてしまうんだろうなあ。
そしてそれをちゃんと表現できるところが本当にかっこいいですね。
美術作品の繋がり
短い活動期の中で、多様な影響を吸収しながらほとんど作品ごとに挿絵スタイルを変え、常に独創的な創作を貫いた。「彼は一日でバロックに、第一帝政様式に、ラファエル前派に、または日本様式になれる。だが、彼は常にビアズリーなのだ」との指摘は、あながち誇張ではない。
ビアスリーの系譜 アールヌーヴォー、日本の近代画家たちの図録より
今回の図録にあった文章をそのまま引用しています。
この文章にあるように、ビアズリーは独創的でありながらも様々な人を魅了することができる表現者。もっと長く生きていたら、どんな作品を作り続けたのだろうかと、どうしても考えてしまいます。
また、ビアズリーの作品が日本に紹介されたことにより、日本画家たちもアール・ヌーヴォーに影響されて作品を作った。若い頃のビアズリーはジャポニズムの表現にもふれていたとあるので、美術作品は互いに影響し、また新しいものが生まれていくのだなと、その繋がりを感じました。いいなあ、そういうの。
個人的にロートレックが好きなので、ビアズリーとの関係性も知ることができてよかったです。
タイミングなどあって会期ギリギリになったりというのはよくあることですが、サロメの挿絵は前期、後期で展示替えがあったようなので、もっと情報を調べて早めに行っておくべきだなーと、改めて思いました。
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